【優しいぬくもり】
今日は夕日の綺麗なとても寒い日だった。
ここは初等部校舎前。いつもなら生徒たちの楽しそうな声でにぎわう場所である。
しかし下校時刻が間際に迫った今、校舎前には誰一人として人がいなく夕日が赤く校舎を染める。
静かな雰囲気の校舎は寂しげで、夕日のもの哀しい感じにとてもよくあっていた。
そんな中、校舎に向かって遠くから女の子が走ってきている。
その少女は寒いためかコートを着てマフラーをグルグル巻きにしている。
「うぅ〜・・・何でこんなに寒いんや!!よりによってこんな日に忘れ物なんて・・・最悪や〜
はよ取ってはよ帰らんともっと寒くなってしまうわ〜」
ぶつぶつと文句を言いながら校舎へ飛び込んで行った。
いつもと違い静かな雰囲気の校舎。 長い廊下に響き亘る自分の足音。
それが何だか不気味で
何度も後ろを振り返りながら教室へ向かう。
【B組】の文字が見え、教室に入ろうとした彼女は足を止めた。
教室には自分の隣の席で静かに寝ている黒髪の少年がいた。
夕日の光が彼の黒髪に当たりキラキラと輝いていて、そこは何とも幻想的な雰囲気だった。
そんな教室をしばらく黙って見ていた彼女は無意識に彼の名前を呼んだ。
「・・・なつめ・・・??寝てるん?下校時刻がもうすぐ・・・」
「・・・何だ。煩いと思えば・・・水玉かよ・・・」
彼−−棗は少し眠たそうな顔をして彼女を見る。
「水玉ちゃうわ!!うちの名前は蜜柑や!み・か・ん!!
何べんゆうたらわかるんや・・・まったく!いい加減覚え〜」
ふぅ・・・とため息をつく蜜柑は少し寒いのか身を縮め、ポケットに手を入れている。
棗は疲れているのかまだ少し眠そうによろりとしながら帰ろうとカバンを持って立ち上がった。
「あれっ?そういえば棗コートは?」
「・・・・・・着てきてねぇ」
「じゃあマフラーは?」
「・・・・・・持ってきてねぇ」
「はぁぁ!?外めっちゃ寒いんよ?あんた馬鹿ちゃうの!?」
「・・・うるせぇ・・・バカはてめぇだろ」
棗は蜜柑に背を向け歩き出そうとした。
「しゃーないなー」
突然棗はふわっと首にぬくもりを感じた。見ると自身の首に赤いマフラーが巻いてあった。
「棗にそれ貸したるわ!!どや?ちょっとは暖かくなったやろ?」
「・・・・・・。」
「無視かい!!!!」
「・・・蜜柑」
不意に真面目に名前を呼ばれカ〜っと赤くなっていく蜜柑。
「っ・・なっ・・なんやっ!!」
「・・・お前のして帰るマフラーは?」
「ほへっ?」
蜜柑は予想外の言葉に驚いていた。
「・・・だから俺にマフラー貸したらてめぇの分のマフラーねーだろ・・・。」
「そっそんなことあらへんよ!!大丈夫!!うち今予備のマフラー持ってんねん!
学校出る前には予備のマフラー巻くから!」
棗は蜜柑を見る。膝丈くらいの長さのコートを着て手には何も持っていない。
「・・・蜜柑」
棗は再度少女の名前を呼ぶ。
その少女は真っ赤になっている。そんな姿が可愛くて、ついついからかいたくなる。
「お前、顔真っ赤。茹でタコみてぇ・・・」
「〜〜〜ちゃっ、ちゃう!!夕日のせいや。ほら!外見てみぃ!」
棗は蜜柑にグイグイと窓際まで引っ張られた。
「この夕日のせいや・・・。」
外から真っ赤な夕日が窓際にいる二人を照らす。
「とにかくうちは帰るから!!じゃっ!!」
俯いたままの蜜柑はバタバタと走って教室を出て行った。
棗は何が何だかよくわからず窓から外を眺めていた。
すると先ほどまで教室にいた少女が校舎から出て行くのが見えた。
その少女は寒そうに身を縮めながらコートの襟を立てて首を風から守っていた。
そんな少女を見た棗は自分のしている
赤いマフラーを愛しそうにぎゅっとにぎりしめた。
そのマフラーからはふわっと僅かに優しい甘い香りがした。
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言い訳
真冬の授業中にふと思いついて書いてみました。
†最後まで読んでくださってありがとうございましたm(_ _)m